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便失禁
1.総論
- 便漏れは、正式には便失禁といいます。漏らさずに維持するという意味の禁制という言葉があります。禁制が保てないという意味で失禁というのです。
- 便失禁とは、無意識のうちに便が漏れる、あるいは便がしたい時にトイレまで我慢できずに漏らしてしまう状態を言います。便失禁の程度は、下着が少しだけよごれる程度の軽いものから、硬い便まで漏れてしまう重症のものまであります。
- 尿漏れ、すなわち尿失禁は医療界でもマスコミでもたくさん取り上げられ、効果的な薬も開発されています。しかし便失禁に関しては、医療側ですら便失禁が十分理解されていないことや、患者様の羞恥心などのため、専門医による的確な治療がなされることなく見過ごされていることが多いのです。
- 高齢化に伴いますます増加するであろう便失禁に対応するため、くにもと病院では、全国初の便失禁専門外来(現在は、クローバー外来)を開設しました。
2.便失禁の程度を便失禁スコア(Continence Grading Scale:Wexners score)で評価
- 便失禁の程度は便失禁スコアで評価します。
- 固形便・液状便・ガスのcontinenceの保持・下着汚染・生活スタイルの5項目について5段階評価。

3.検査
(1)肛門内圧検査

- 肛門機能の評価は,便失禁や便秘など排便機能障害や肛門疾患の診断と治療に際して極めて重要な検査です。
- 肛門括約筋の機能を検査します。肛門の締まり具合を肛門を締め付ける力で評価しようというものです。
- 特に、女性は体の構造上、前方の括約筋が弱く、出産時に括約筋が切れたり薄くなります。回復しますが、そのことが、高齢による筋力の低下により、便失禁の原因となることが多いです。
- ●便が我慢できない ●便とガスの区別がつかない ●気がつかないうちに下着が汚れる。 ●水様便が漏れるなどの兆候がある人は、この検査を行なってみることを勧めます。
肛門管最大静止圧(MRP)
- 内肛門括約筋機能の指標とされ、安静時の便の禁制を保つ。
- 正常値は40mmHg〜100mmHg。
- MRPが低下すると無意識のうちに便が漏れる漏出性便失禁となる。
- これは、自分の意思では動かすことのできない、内肛門括約筋の機能を見ます。
- 肛門内圧の50〜80%はこの筋肉の作用によると考えられています。
肛門管最大随意収縮圧(MSP)
- MSPが低下すると、便意が感じた場合に我慢できずに漏らしてしまう切迫性便失禁となります。
- 正常値は80mmHg〜120mmHg
- これは、自分の意思で動かすことのできる、外肛門括約筋の機能を見ます。
- 肛門内圧の25%〜30%はこの筋肉の作用によると考えられています。
機能的肛門管長(HPZ)

(2)肛門超音波検査

- 肛門に超音波プローブを挿入し,内外肛門括約筋および粘膜層の厚さの計測,断裂や欠損の有無などを観察する検査です。
- 特に肛門周囲膿瘍や痔瘻, 肛門括約筋損傷による便失禁の診断に有用。

4.治療
(1) 低周波電気刺激療法
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肛門括約筋には、肛門を取り囲む内肛門括約筋と、さらにその周りを取り囲む外肛門括約筋があります。外肛門括約筋は随意筋といって自分の意志で締めることができます。一方、内肛門括約筋は心臓の筋肉と一緒で、自分の意志で動かせない不随意筋です。このため内肛門括約筋の筋力低下に対しては、自己訓練法やバイオフィードバック療法の効果はあまりありません。
- 低周波には筋力強化作用の他にも、自律神経改善作用、血流改善作用、感覚改善作用もあり、当院の成績では8割以上の方で効果がみられています。

方法
- 1. 側臥位にて、
- 2. 肛門管リハビリテーション用双極電極(スターメディカル)を、
- 3. 各電極が肛門管の左右に当たるように挿入し、
- 4. オムロン社製、低周波電気刺激装置エレパレスHV-F 127に接続します。
- 5. 周波数は1〜1,200 Hzに変動し、
- 6. 刺激電圧は1〜250 mVを周期的に繰り返すモードを使用し、
- 7. 電圧の強さは括約筋の収縮が確認できるか、
- 8. 刺激時に軽い痛みを感じる程度としています。
(2) 生活療法
- 便失禁はその重症度によって治療法がさまざまです。
- 最も容易に実践できるのは食生活の改善です。
- 下痢や水様便がなかなか改善されなければ、食物繊維を多く摂取します。
- カフェインや香辛料、アルコールなどの刺激物のほか、脂肪分の多い食事や甘味料の摂取などは下痢を起こしやすく、食事が便失禁の原因となっていることもあります。
- 便失禁を軽減するには、少量の食事を何回かに分けて摂る、食事と水分は別々に摂る、水分を多めに摂取するなどの方法があります。
- また、慢性の便秘症のために便をすっきり出し切れないために、直腸に残ってしまった便が漏れる場合があります。この場合は毎朝規則的な排便習慣を身につけることや、下剤による便コントロールが有効です.
(3) 薬物療法(飲み薬)
- 下痢の時だけ漏れたり、便が柔らかすぎるために漏れる場合は、便を硬くする止痢剤や、便の水分量を調整する薬を使ったり、腸の過敏性を取る薬などを用います。
(4) 自己訓練法
- 自分で行える肛門訓練で、肛門を5〜10秒間締め続けてから緩める運動を10回程繰り返します。
- どんな姿勢でもかまわないので、いつでも人に悟られずに行えます。
- 肛門の穴を持ち上げるように締め付けると、上手く締められ、骨盤の内蔵や肛門を支えている骨盤底筋群も訓練することができます。
- → 骨盤底筋体操(QQQ体操)
(5) バイオフィードバック療法

- 普段から意識して肛門を締めている人はいないので、自分では締めているつもりでも、大臀筋にしか力が入っていない人がいます。
- 肛門括約筋だけを上手に締められる人は意外と少ないのです。そこで、肛門に圧センサー(器具の写真)を入れた状態で、画面で括約筋を上手く締められているかを確認しながら、肛門の締め具合を自分で覚えるのがバイオフィードバック療法です。
- 上手な締め方を覚えれば、自宅で効率よく自己訓練ができるようになります。
(6) 手術
- 脱肛や直腸脱といった直腸肛門疾患が便失禁の原因になっている場合は手術が必要です。
- 脱肛の場合は全身麻酔は不要で、高齢の方にも安全に行えます。
- 直腸脱も肛門から行う手術方法は部分麻酔でできますし、お腹から行う方法では腹腔鏡を用いて、小さな傷で行うことができます。
- くにもと病院では、ジオン注を用いた低侵襲性の手術を行っています。
- 出産や肛門手術によって括約筋が大きく損傷している方には、括約筋を縫い合わせる手術を行います。
(7) ネオスチグミン軟膏療法

- 重症筋無力症という全身の筋肉に力が入らなくなる病気があります。
- この病気に用いられるネオスチグミンには筋収縮作用があります。
- このネオスチグミンを軟膏にして肛門に塗ることによって、一時的ですが肛門を締まりを良くすることができます。
- 一度塗ると2〜3時間程効果があります。
- 根本的な治療ではありませんが、とても安全で、副作用はなく外出時などに便利です。
(8) 対処療法(アナルプラグ)

- 原因を解決する方法ではない。
- 対症療法としてアナルプラグがあります。
- これは肛門に直接挿入して便が漏れないようにする肛門用装具です。
- 素材は水分を吸収して膨張する多孔性ポリウレタンで、表面には水溶性のフィルムがコーティングされています。
- 効果としては、便失禁に伴う汚染の軽減、便失禁に伴う臭いの防止(腸内ガスは出せます)などが期待できます.また、用途も多様で、入浴時や下痢の際にも使用可能で、最長12時間まで使用可能です。
5.骨盤底筋体操(QQQ体操)
- 便失禁・尿失禁の原因の一つに「骨盤底筋群」の筋肉の緩みがあります。
- 骨盤底筋群とは、骨盤内の恥骨と尾骨との間にあるハンモック状の筋肉群で、靭帯などの支持組織や陰部神経と共に、骨盤内臓器(膀胱・子宮・直腸など)を支えバランスを取り各臓器の働き(正常の畜便・排便・蓄尿・排尿など)を司っています。
- この骨盤底筋群が加齢・出産・慢性の便秘・肥満・ホルモンのバランスを崩すなどで緩み伸びてしまい直腸脱・性器脱や便失禁・尿失禁を発症し、日常生活にさまざまな障害を起こすことも少なくありません。
- 骨盤底の筋肉は、手足と同じで鍛えることのできる筋肉です。早めのケアを、そして予防のためにも毎日無理なく続けられるよう骨盤底筋群運動が考えられました。


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